春の定期健康診断は「受けた後」が重要!産業医による事後措置と就業判定の実務

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健康診断の結果、キャビネットに眠っていませんか?

5月に入り、春に実施した定期健康診断の結果が続々と企業に返ってくる時期となりました。人事労務担当者の皆様、回収した結果を「異常ありの社員には受診を促すだけ」で終わらせていないでしょうか。

実は、健康診断において最も重要なのは「受けた後」の対応です。異常所見を放置することは、従業員の健康を損なうだけでなく、企業としての安全配慮義務違反に問われるリスクを孕んでいます。

本記事では、精神科専門医・産業医の視点から、企業が法的義務として行うべき「事後措置」の重要性と、「就業判定」の具体的な実務について解説します。

専門的な解説:なぜ「受けっぱなし」は危険なのか?

身体の不調から派生するメンタルヘルス・パフォーマンス低下

健康診断で指摘される高血圧、脂質異常症、肝機能障害といった身体的な異常は、自覚症状がないまま進行することが多いため、本人は「まだ大丈夫」と自己判断しがちです。

しかし、内科的な異常を放置することで、睡眠の質の低下や慢性的な疲労が引き起こされるケースは少なくありません。精神科・心療内科の臨床現場でも、「気分の落ち込みや集中力の低下(プレゼンティーズム)を訴えて受診した結果、背景に未治療の身体疾患が隠れていた」という事例は頻繁に見受けられます。

心と体は密接に連動しています。身体のSOSを早期にキャッチして適切な処置へ繋げることは、結果的に深刻なメンタルヘルス不調や長期休職を予防する強力な防波堤となるのです。

企業の「安全配慮義務」と法的リスク

労働安全衛生法により、企業には従業員に健康診断を受診させる義務だけでなく、その結果に基づいて「事後措置」を行う義務が定められています。 もし、健康診断で「要精密検査」や「要治療」と判定された従業員に対し、企業が何もアクションを起こさず、後にその従業員が倒れたり重篤な疾患を発症したりした場合、「結果を把握していたのに適切な措置を怠った」として、企業側が多額の損害賠償責任を問われるリスクがあります。

企業向けの対策:人事労務が知っておくべき「事後措置」の実務

では、具体的に企業はどのようなアクションを取るべきなのでしょうか。重要なのは、産業医と連携した「就業判定」の実施です。

産業医による「就業判定(意見聴取)」とは

健康診断の結果において異常の所見があると診断された労働者に対し、企業は「その従業員が現在の業務を継続しても問題ないか」について、医師(産業医)から意見を聴取しなければなりません。

産業医は結果を確認し、以下の3つの区分で就業判定を行います。

  1. 通常勤務(現在の業務をそのまま続けてよい)
  2. 就業制限(労働時間の短縮、出張の制限、深夜業の免除などの配慮が必要)
  3. 要休業(療養に専念するため、休業が必要)

人事労務担当者は、この産業医の意見をベースに、実際の業務内容と照らし合わせて具体的な就業上の措置(残業禁止や配置転換など)を決定します。

事後措置をスムーズに進めるためのステップ

  1. 結果のスクリーニング: 健診結果が届いたら、まずは人事労務で「異常の所見」がある従業員をリストアップします。
  2. 産業医への共有と意見聴取: リストと健診結果を産業医に提出し、就業判定を依頼します。
  3. 対象者への受診勧奨と面談: 再検査や精密検査が必要な従業員には受診を強く促します。必要に応じて、産業医と従業員の面談を設定し、専門的な立場から生活指導や就業上のアドバイスを行います。
  4. 社内環境の調整: 産業医から「就業制限」の意見が出た場合は、現場の管理職と連携して業務量の調整を行います。

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健康診断の事後措置は、従業員の健康を守り、企業の法的リスクを回避するための「投資」です。しかし、医学的な知識が求められるため、人事労務のご担当者様だけで抱え込むには負担が大きい業務でもあります。

北陸こころとからだ産業支援センターでは、精神科専門医・精神保健指定医としての臨床経験と、産業医としての実務経験を併せ持つ医師が、貴社の状況に合わせたきめ細やかなサポートを提供します。

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