社員が診断書を持ってきたら会社はどうする?人事の初動・休職・就業配慮

診断書と対応チェックリストを確認する人事担当者の手元

従業員から「しばらく休養が必要」「勤務時間の短縮が望ましい」などと記載された診断書を受け取ったとき、人事・総務担当者は、どこまで確認し、いつ産業医へつなぎ、会社として何を決めればよいのでしょうか。

診断書は重要な医学的意見ですが、受け取ったその場で人事担当者が病状を判断したり、主治医の記載だけで中長期の就業措置をすべて決めたりするものではありません。本人の安全を確認し、診断書の内容、就業規則、実際の業務、産業医等の意見を順番に整理します。

目次

診断書を受け取った当日に確認すること

  1. 本人の現在の体調と安全を確認する
  2. 診断書の発行日、休養期間、就業上の配慮に関する記載を確認する
  3. 就業規則の休職・欠勤・診断書提出に関する手続きを確認する
  4. 当面の出勤、業務、連絡方法を本人と整理する
  5. 必要に応じて産業医面談や主治医への情報提供依頼を検討する
  6. 会社から説明した内容と次の連絡日を記録する

自傷他害のおそれ、意識の混乱、一人で安全に帰宅することが難しい状態など、緊急性が疑われる場合は、手続きより安全確保を優先します。状況に応じて家族、医療機関、救急窓口等への連絡を検討してください。

1.診断書の何を確認するか

会社が最初に確認したいのは、診断名を詳しく聞き出すことではなく、働き方を判断するために必要な事項です。

  • 発行日と医療機関
  • 休養が必要な期間
  • 就業継続の可否
  • 避けるべき業務や望ましい配慮
  • 再診や再評価の目安

診断書の記載が「過重労働を避けること」「業務軽減を要する」だけでは、会社が具体的な配慮を決めにくい場合があります。そのときは、本人へ確認の目的を説明し、本人の同意を得たうえで、勤務情報を主治医へ伝え、就業に関する具体的な意見を求める方法があります。

2.診断書の内容別に初動を分ける

「休養を要する」と書かれている場合

本人の安全と療養を優先し、就業規則に基づく欠勤・休職の手続きを案内します。休職期間、賃金の取扱い、傷病手当金などの制度、会社への連絡窓口、診断書の更新が必要となる時期、復職までの流れを、できれば文書で説明します。

休職中の連絡頻度は一律に決めつけず、療養の妨げにならないよう本人と相談して決めます。実際の休職手続きは、メンタルヘルス不調で休職するとき|人事が最初に整える手順と連絡方法も参照してください。

「勤務時間の短縮」「業務軽減」が書かれている場合

「何時間まで」「残業や夜勤は可能か」「運転、高所作業、単独作業など安全に関わる業務をどうするか」といった具体化が必要です。本人の希望だけでなく、実際の職務内容と会社が実施できる配慮を整理し、産業医等の意見を踏まえて就業上の措置を検討します。

「復職可能」と書かれている場合

主治医の復職可能という判断は重要ですが、必ずしも元の業務を継続して遂行できる状態まで確認したものとは限りません。通勤、生活リズム、勤務時間、集中力、対人負担、再発防止のための配慮などを確認し、産業医等の意見を参考に会社が復職可否と支援内容を判断します。

復職判断と支援プランについては、職場復帰支援の5つのステップ|復職可否・支援プラン・就業配慮で詳しく解説しています。

3.主治医・産業医・会社の役割を分ける

主治医

治療を担当し、病状や治療経過を踏まえて、休養や就業上の配慮に関する医学的意見を示します。ただし、会社の職務内容や職場環境を詳しく把握していない場合があります。

産業医

本人の健康状態と実際の業務を結び付け、就業継続の可否、避けるべき業務、必要な配慮、再評価の時期などについて会社へ意見を述べます。産業医面談は治療を目的とする診療とは役割が異なります。

産業医面談で確認する内容や会社への報告範囲は、産業医面談では何を話す?守秘義務・会社への報告範囲・面談の流れをご覧ください。

会社

主治医や産業医等の意見、本人の希望、職務内容、職場で実施できる配慮、就業規則を踏まえて、休職、就業継続、復職、就業上の措置を決定します。判断過程を人事だけで抱え込まず、必要な担当者と役割を分けることが重要です。

4.産業医へつなぐことを検討する場面

  • 診断書の記載だけでは具体的な業務配慮を決められない
  • 本人の希望と診断書の内容が一致しない
  • 主治医の意見と職場で把握している勤務状況に差がある
  • 運転、危険作業、夜勤など、安全に直結する業務がある
  • 休職・復職を繰り返している
  • どこまで健康情報を社内共有すべきか判断に迷う

産業医がいない事業場でも、外部の産業医・医師や地域産業保健センター等の公的窓口に相談できる場合があります。事業場の規模、相談内容、地域によって利用条件が異なるため、事前に確認してください。

5.診断書と健康情報の取扱い

診断書には機微な健康情報が含まれます。受け取る担当者、保管場所、共有先、保存期間を社内ルールで定め、業務上必要な範囲を超えて共有しないようにします。

  • 上司へ共有するのは、原則として必要な就業上の配慮や業務調整
  • 診断名や治療内容の共有は、目的と必要性を慎重に確認する
  • 主治医へ追加情報を求める場合は、目的と共有範囲を本人へ説明する
  • メールや共有フォルダーでの無制限な回覧を避ける

治療と仕事の両立における本人同意と情報共有は、治療と仕事の両立支援|本人同意と就業配慮をどう進めるかも参考になります。

6.本人へ説明しておきたいこと

  • 当面の出勤・休職・業務の取扱い
  • 会社の連絡窓口と次回連絡日
  • 必要となる書類と提出時期
  • 産業医面談を行う目的
  • 会社内で健康情報を共有する範囲
  • 復職や配慮の判断手順

担当者ごとに説明が変わらないよう、休職案内、連絡票、主治医への情報提供書、本人同意書、復職支援の流れをあらかじめ様式化しておくと実務が安定します。

7.会社側で残しておきたい記録

  • 診断書を受け取った日と受領者
  • 診断書に記載された休養期間・就業上の意見
  • 本人の体調と意向を確認した内容
  • 会社から説明した制度・手続き
  • 産業医や主治医へ確認する事項
  • 暫定的な業務配慮と見直し日
  • 次回の連絡予定

健康情報そのものと、人事労務上の対応記録は、閲覧権限を整理して管理します。

避けたい対応

  • 診断書を受け取ったその場で退職や異動を迫る
  • 診断名や治療内容を必要以上に聞き出す
  • 上司や同僚へ診断書をそのまま共有する
  • 主治医の意見を無視して出勤を続けさせる
  • 反対に、診断書の短い記載だけで長期的な配置や復職条件を固定する
  • 連絡担当者を決めず、複数部署から本人へ連絡する

よくある質問

診断名を上司へ伝える必要がありますか

業務調整のために必要なのは、診断名よりも、避けるべき業務や必要な配慮であることが一般的です。誰に何を共有するかを整理し、本人にも説明します。

会社から主治医へ直接連絡してよいですか

健康情報の取得や共有には本人の同意が重要です。確認したい目的と項目を明確にし、原則として本人を通じた情報提供や、本人の同意を得た連携を検討します。

産業医がいない場合はどうしますか

外部の産業医・医師への相談、公的な産業保健支援機関の活用を検討します。単発対応で足りるか、継続して相談できる体制が必要かは、発生している案件と事業場の状況から整理します。

まとめ

従業員から診断書を受け取ったときは、病名を詳しく確認することよりも、本人の安全、当面の就業可否、休養期間、必要な配慮、次の連絡日を整理することが先です。

主治医の診断書、産業医等の意見、本人の希望、実際の業務、就業規則を組み合わせ、会社として休職・就業継続・復職・配慮を判断します。健康情報の共有は必要最小限とし、判断と説明の経過を記録しておきましょう。

参考情報

北陸こころとからだ産業支援センターの産業医・休職復職支援をご確認ください。具体的なご相談は、お問い合わせフォームから承っています。

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