職場の自殺予防|変化に気づいたときの声かけと相談のつなぎ方

職場の自殺予防と相談を表す人物と吹き出しのイラスト

「いつもより口数が少ない」「欠勤が続いている」。気になる変化があっても、上司としてどこまで尋ねればよいか迷うことがあります。

管理職に求められるのは、病名を決めたり、自殺の危険を点数で判定したりすることではありません。ただし、診断をしないことと、目の前の安全を確認しなくてよいことは別です。話を聴き、緊急性が疑われる場合はためらわず支援を求める。そのための連絡先と役割を、日頃から決めておきましょう。

目次

まず、その人自身の変化に気づく

他の従業員ではなく、本人の普段の様子と比べます。遅刻・欠勤の増加、業務の抜け、周囲とのやり取りの減少、眠れていないという訴えなどは、声をかけるきっかけになります。

これらは診断基準や危険度の判定表ではありません。変化が目立たないから安全とも言い切れず、本人がつらさを話してきたときは、その訴えを受け止めます。

厚生労働省は、ゲートキーパーの役割を「変化に気づく」「耳を傾ける」「支援先につなげる」「見守る」と整理しています。職場でも、すべてを一人で担わず、役割を分けて関われる体制が大切です。厚生労働省・ゲートキーパーになろう!

声をかけるときは、評価ではなく事実から

落ち着いて話せる場所で、観察したことと心配していることを伝えます。以下は声かけの例です。

このところ、眠れていないと話していましたね。体調や仕事で困っていることはありますか。今ここで全部話さなくても大丈夫です。

「やる気がない」「考えすぎ」と評価せず、話の途中で励ましや解決策を急がないようにします。無理に詳しい事情を聞き出す必要はありません。本人が話せる範囲を尊重し、上司以外の相談先も選べることを伝えます。

死にたい気持ちを打ち明けられた場合は、否定したり、秘密にすると約束して抱え込んだりせず、今の安全と必要な支援につなぐことを優先します。

差し迫った危険がある場合は、通常の面談予約を待たない

本人が今すぐ自分を傷つけそうだと話している、安全な状態を保てない、意識や反応に異常があるなど、差し迫った危険や救急対応の必要がある場合は、119番へ連絡します。産業医の次回訪問、人事の決裁、相談窓口の受付開始を待つ対応にはしません。

支援する側の安全を確保しながら、可能な範囲で本人を一人にせず、周囲の協力を得て救急隊等へ引き継ぎます。無理に身体を押さえたり、担当者一人で危険な対応をしたりしないでください。

緊急性が判断できない場合も、上司だけで「大丈夫」と結論を出さず、その場で医療機関や産業保健職等に相談します。遠隔で相談を受けたときは、本人の現在地と折り返し先を確認し、その場所に応じた支援を求めます。

この段落は職場の初期対応の一般的な整理です。個別の緊急度や医療上の判断は、救急隊・医療機関等と連携して行います。

「窓口を渡して終わり」にしない

緊急対応を要しない場合は、誰に、いつ、どの方法で相談するかを本人と一緒に決めます。「産業医に相談できます」と伝えるだけでなく、予約先や次の連絡時刻を具体的にします。

産業医・保健師、かかりつけ医、精神保健福祉センター等から、状況に合う相談先を選びます。産業医のいない小規模事業場では、地域産業保健センターに支援内容や利用条件を問い合わせる方法もあります。ただし、これらを常時対応の救急窓口として案内しないようにします。

本人が希望する場合は予約や移動を手伝い、相談につながった後も、負担にならない方法と頻度で様子を確認します。受診の詳細や診断名の報告を一律に求めるのではなく、仕事上どのような配慮が必要かを確認します。

情報は、目的と共有先を決めて扱う

相談した内容を部署全体へ知らせる必要はありません。通常の相談では、何のために、誰に、どこまで共有するかを本人に説明し、必要な同意や社内手続を確認します。管理職へは、勤務時間の調整や担当変更など、就業上必要な情報を中心に伝えます。

一方、生命・身体を守るために情報提供が必要で、本人の同意を得ることが困難な場合には、同意なしで第三者へ提供できる例外があります。「同意がないので救急隊や必要な関係者へ何も伝えられない」とする対応ではありません。必要な情報に限り、共有先・内容・理由を記録します。個人情報保護委員会・通則ガイドライン3-6-1

家族への連絡も機械的に行わず、通常時は本人の意向を確認します。緊急時は安全確保の必要性と状況を踏まえて判断します。記録には病名の推測を書き足さず、本人の発言、観察した事実、実施した対応を区別して残します。

職場が先に用意しておくもの

相談を受けた人の経験だけに任せないよう、次の4点を具体化します。

  • 日中・夜間・休日それぞれの連絡先と、担当者不在時の代行者。
  • 緊急時に119番へ連絡することを含む、承認待ちで止まらない手順。
  • 通常の相談予約、勤務調整、情報共有の担当と方法。
  • 相談を受けた管理職自身も専門職に相談できる仕組み。

長時間労働やハラスメントへの対応、業務量の調整、異動後のフォローも併せて進めます。個人への声かけだけで、仕事上の負担を残したままにしないことが重要です。働く人のメンタルヘルスに関する情報や相談先は、厚生労働省のこころの耳でも案内されています。

本人にも案内できる相談先

以下は厚生労働省「まもろうよ こころ」で、2026年10月1日に番号・受付条件を再確認した窓口です。いずれも救急車の要請に代わるものではありません。

相談先 電話番号・受付
#いのちSOS 0120-061-338。無料、24時間365日
よりそいホットライン 0120-279-338。無料、24時間。福島県からは0120-279-226。050で始まるIP電話からは050-3655-0279
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556。通話料がかかり、曜日・時間は地域により異なる。050で始まるIP電話からは接続できないため、公式案内で地域の窓口を確認

電話がつながらない場合や、文字での相談を希望する場合に備え、電話相談の最新案内とSNS等の相談案内も周知します。差し迫った危険があるときは、相談電話への接続を待たず119番へ連絡してください。

よくある質問

本人から「誰にも言わないで」と言われたら

話してくれたことを受け止め、むやみに広めないことを伝えます。そのうえで、安全を守るために必要な人へ相談する場合があることを説明します。秘密を守る約束だけで、一人で抱え込まないようにします。

相談や受診を断られたら

拒否した理由や利用しやすい方法を尋ね、上司以外の窓口も提示します。緊急性が疑われる場合は、断られたことだけを理由に対応を終えず、医療機関等へ相談します。

全社への注意喚起はどうすればよいですか

特定の従業員の状況や憶測を共有するのではなく、利用できる相談先、休暇・勤務調整の手続を一般的な情報として案内します。

自殺予防は、啓発週間だけで終える取り組みではありません。担当者が変わっても支援につなげられるよう、連絡先と手順を見直しておきましょう。当センターへのご相談は、平時の相談体制や管理職研修などの整備が対象です。お問い合わせは緊急対応窓口ではありません。

参考資料の初回確認日:2026年9月20日。相談窓口の番号・受付条件は2026年10月1日に再確認しました。社内掲示や公開の直前にも公式案内を確認してください。

目次