台風・豪雨時の安全配慮|出勤判断と在宅勤務・帰宅困難への備え

台風や豪雨の予報が出たとき、従業員が知りたいのは「明日は出勤するのか」「途中で電車が止まったらどうするのか」という具体的な扱いです。判断が遅れると、それぞれが迷ったまま移動を始めてしまいます。
会社全体の方針だけでなく、自宅・通勤経路・勤務先の危険を踏まえて動ける手順を用意しておきましょう。この記事では、接近前の出勤判断から、在宅勤務への切替、帰宅できない場合の備えまでを整理します。
出勤判断は「誰が・何を見て・いつ・どう伝えるか」
以下は社内ルールを作るための整理例です。全国共通の出勤停止基準を示すものではありません。
| 決めること | 社内で確認する内容 |
|---|---|
| 判断者 | 責任者と代行者。拠点ごとの判断を認める範囲 |
| 判断材料 | 気象情報、自治体の避難情報、通勤経路の危険、交通機関の運休情報 |
| 連絡時刻 | 前日の予告と当日の判断を伝える時刻。状況悪化時の追加連絡 |
| 連絡方法 | 一斉配信と代替手段、受信確認、派遣・委託先への連絡 |
| 連絡不能時 | 危険な移動をせず、安全確保を優先して連絡を試みる手順 |
「連絡がなければ通常出勤」とだけ決めるのは避けます。停電や通信障害で連絡できない場合もあるためです。出社指示が出ていても、本人のいる場所や経路が危険な場合は移動を見合わせ、その状況を報告できるようにします。
社内メールを使わない従業員にも情報が届くか、短時間勤務者や夜勤者に連絡の抜けがないかを確認してください。派遣社員への労務上の指示や勤務の扱いは、派遣元との役割分担も整理します。
2026年の気象情報の名称に合わせる
気象庁は2026年5月29日から新たな防災気象情報の運用を開始しました。河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮に関する情報は、警戒レベルとの関係が分かる名称に整理されています。例えば「レベル3大雨警報」「レベル4大雨危険警報」などです。すべての警報・注意報を同じ対応に置き換えるものではありません。気象庁の説明
気象庁などが発表する防災気象情報と、市町村が発令する避難指示等は別の情報です。自治体の発令だけを待つのではなく、キキクル、河川の水位、現地の状況も確認して安全な行動につなげます。
社内基準を「警報が出たら」とだけ書かず、対象地域・災害の種類・確認する情報を特定します。職場が安全でも、自宅周辺や通勤途中に浸水・土砂災害のおそれがあれば、同じ出勤判断にはできません。
早めの退勤と施設内待機を使い分ける
接近前で経路の安全が確保できる段階なら、出勤見合わせ、始業の繰下げ、早めの退勤、在宅勤務への切替を検討します。すでに風雨が強まっている場合は、一斉に帰宅させることがかえって危険になる場合があります。
施設内で待機するのは、建物と周辺の安全が確認できる場合です。浸水、土砂災害、火災などのおそれがある場所にとどまらせる判断ではありません。危険が迫っている場合は、帰宅よりも適切な避難・安全確保を優先します。
内閣府の2026年1月の帰宅困難者対策ガイドラインは、大規模地震以外の暴風・豪雨等による交通停止も扱っています。「むやみに移動しない」を、危険な建物からも出ないという意味に読み替えないことが重要です。内閣府ガイドライン
在宅勤務への切替で決めておくこと
在宅でできる業務、端末と通信環境、始業・終業の記録方法、停電時の連絡先を確認します。臨時の在宅勤務でも、労働時間や健康への配慮が不要になるわけではありません。厚生労働省のテレワークガイドライン
本人や家族の避難が必要な状況では、仕事の継続より安全確保を優先します。停電や通信障害で働けない場合の報告方法と勤務の扱いも、事前に説明しておきます。
在宅勤務ができない業務については、継続が必要な業務と延期できる業務を分けます。必要な担当者であっても、危険な経路での出勤を前提にはしません。代替要員、作業の縮小・停止、安全な時点での交代を含めて検討します。
帰宅できない人の備えと健康への配慮
安全な待機場所、水・食料、トイレ、照明、充電手段、休息スペースを確認します。数量は想定人数と待機期間に合わせ、来訪者や食物アレルギー等への対応も検討してください。地震を想定した備蓄の目安を、台風時に一律の滞在日数を命じる根拠にしないようにします。
常用薬や治療上の配慮が必要な人の相談先も決めておきます。病名や服薬情報を全従業員分集めるのではなく、必要な配慮を本人と産業保健職で確認し、担当者へ共有する範囲を限定します。
復旧後も、通勤の負担、自宅の片付け、業務の遅れが重なることを見込みます。疲労が強い人に残業を集中させず、業務量と休息を調整します。
賃金・休暇の扱いは、安全の判断と分けて整理する
会社が休業する場合と、会社は営業しているが交通事情で出勤できない場合では、確認すべき条件が異なります。安全確保を先に伝えたうえで、労働契約・就業規則等に照らして勤務の扱いを案内します。
労働基準法第26条の休業手当は、使用者の責に帰すべき事由による休業について、平均賃金の60%以上を支払うものです。ただし、「台風だから必ず不要」「会社の指示だから必ず必要」と単純には決まりません。厚生労働省の災害時Q&Aでは、不可抗力に当たるかを、原因と回避可能性等から個別に判断する考え方が示されています。法定の休業手当と、契約等に基づく賃金の支払義務も区別が必要です。厚生労働省Q&A・問1-2、1-4、1-5
欠勤を本人の申請なしに年次有給休暇へ自動振替する運用は避け、制度上の手続と本人の意向を確認します。判断に迷う場合は、労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士等へ確認してください。
社内周知文の例
以下は、会社が実際の日時・対象者・連絡先を入れて使うための例です。
台風・豪雨に伴う勤務の扱いは、指定の連絡手段でお知らせします。職場への出勤より、ご自身とご家族の安全確保を優先してください。自宅周辺や通勤経路が危険な場合は無理に移動せず、担当者へ状況をご連絡ください。連絡が取れない場合も危険な移動はせず、安全を確保したうえで代替の連絡手段を試してください。勤務・休暇の扱いは、確認後に個別にご案内します。
よくある質問
電車が動いていれば、出勤を求めてもよいですか
運行情報だけでは判断できません。駅までの道や自動車通勤の経路、勤務先周辺も含めて危険を確認します。無理な移動をしないための例外対応を用意してください。
小規模な職場にも詳しいマニュアルが必要ですか
まずは判断者と代行者、連絡手段、連絡不能時の行動を1枚にまとめる方法があります。文書を増やすより、その手順が全員に届き、使えるかを確認します。
荒天時の健康配慮や、待機・復旧時の負担の整理は産業保健の相談事項です。社内ルールの整備にあたり、当センターへのお問い合わせもご利用ください。緊急の避難判断や救急対応を受け付ける窓口ではありません。
参考資料の確認日:2026年9月20日。気象情報・運行情報は、実際の判断時点で最新の発表を確認してください。
