【2028年4月施行】50人未満もストレスチェック義務化|企業が2026年から進める準備

カレンダーとチェックリストを前に実施計画を確認する担当者の手元

「うちは従業員が30人ほどなので、ストレスチェックは努力義務のままですよね」——小規模な事業場からよくいただく質問です。この前提は、2028年(令和10年)4月1日に変わります。労働者数50人未満の事業場でも、ストレスチェックの実施が義務になるためです。施行までまだ時間があるように見えますが、実施体制と個人情報の取扱いを決めるには、それなりの準備期間が必要です。

目次

2028年4月1日から、50人未満の事業場も義務の対象になる

2025年(令和7年)5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)により、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務とされました。この部分の施行日は、厚生労働省のリーフレット「労働者数50人未満の事業者もストレスチェックが義務になります!」で令和10年4月1日と示されています。

2028年3月31日まで 2028年4月1日から
労働者数50人以上の事業場 実施は義務 変更なし
労働者数50人未満の事業場 実施は努力義務 実施が義務

厚生労働省は2026年2月に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しており、施行に向けた実務の考え方はここで確認できます。なお、施行日前の期間について特別な経過措置を設ける旨の記載は、現時点で公表されている資料には見当たりません。施行日までは従来どおり努力義務として扱われます。

事業場の人数と、受検対象となる労働者を分けて確認する

ストレスチェック制度は、企業全体ではなく事業場単位で適用を判断します。本社、支店、工場、営業所などが場所的・組織的に独立して労務管理を行っている場合は、それぞれを1つの事業場として確認します。

事業場の「50人」を判定するとき

現在の実施義務の区分や労働基準監督署への結果報告の要否を判断する際の「50人」は、ストレスチェックを受ける個々の労働者の要件とは別に考えます。厚生労働省の制度Q&Aでは、契約期間が1年以上か、週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上かで人数を絞るのではなく、常態として使用しているかで判断するとされています。

そのため、週1回勤務するパート・アルバイトでも、継続して雇用し、常態として使用している場合は人数に含めます。2028年4月1日以降は50人未満の事業場にも実施義務が広がりますが、50人以上かどうかは、労働基準監督署への結果報告や産業医選任など別の義務を確認するうえで引き続き重要です。

実際にストレスチェックの対象となる労働者

一方、ストレスチェックを実施する対象者は、一般定期健康診断の対象者と同様に、原則として次の2つをいずれも満たす労働者です。

  1. 期間の定めのない労働契約で使用される者。期間の定めがある場合は、契約期間が1年以上、契約更新により1年以上使用される予定、またはすでに1年以上引き続き使用されている者
  2. 1週間の労働時間数が、その事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間数の4分の3以上である者

つまり、事業場の人数を数える基準と、個々の受検対象者を決める基準は同じではありません。パート・アルバイトが多い事業場では、この2段階を分けて確認してください。

誰が実施するのか|実施者と実施事務従事者

ストレスチェックは、企業の人事担当者が自由に設計して実施できるものではありません。役割が2つに分かれており、それぞれに求められる要件が異なります。

実施者

ストレスチェックを実施する者です。小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルは、委託先の外部機関の医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士または公認心理師を挙げています。50人未満の事業場では、社内に該当する専門職がいないことが多いため、外部機関へ委託する形が中心になります。

実施事務従事者

実施者の指示により、調査票の回収、データ入力、個人結果の記録の保存、医師の面接指導の申出勧奨といった事務に携わる者です。社内の担当者が担うことがあります。

ここで最も注意が必要なのが、人事に対して直接の権限を持つ監督的地位にある者を実施事務従事者に指名できないという点です。小規模な事業場では、総務担当者が人事権も持っているケースが少なくありません。誰を実施事務従事者にするかは、体制を決める段階で確認しておいてください。

実施者および実施事務従事者には守秘義務が課されており、違反した場合の罰則も定められています。

個人結果は会社が勝手に見られない

ストレスチェックの個人結果は、健康情報であり、個人情報保護法第2条第3項に規定する「要配慮個人情報」に含まれる機微な情報です。取扱いは次のようになります。

  • 個人のストレスチェック結果は、実施者から、他者に内容が分からない形で労働者本人に直接通知されます
  • 事業者が個人結果の提供を受けるには、労働者本人の事前の同意が必要です
  • 本人の同意がない限り、会社が個人結果を知ることはありません

「実施したのだから会社が結果を把握できる」という前提で体制を組むと、制度の趣旨から外れてしまいます。従業員への説明でも、この点を最初に伝えると受検への抵抗が下がります。

高ストレス者への面接指導、集団分析はどう扱うか

面接指導は申出があれば実施義務

労働者に受検義務は課されていませんが、ストレスチェックの結果を受けて対象者から医師の面接指導の申出があった場合、事業者は遅滞なく面接指導を実施する義務があります。50人未満の事業場では、産業医を選任していないことが多いため、申出があったときに誰へ依頼するかを事前に決めておくことが実務上の要点になります。後述する地域産業保健センターを使う選択肢もあります。

面接指導の後にどのような就業上の措置を検討するかは、ストレスチェック後の事後対応|面接指導・就業措置・集団分析の進め方で整理しています。

集団分析・職場環境改善は努力義務

小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルは、集団分析および職場環境改善について、事業場規模にかかわらず努力義務としています。義務化されるのはストレスチェックの実施であり、集団分析まで義務になるわけではありません。この区別は社内説明で混同されやすいため、注意してください。

なお、人数が少ない事業場では、集団分析の単位が小さくなると個人が特定されるおそれがあります。2027年(令和9年)4月1日から、集団分析を行う場合は、特定の個人を識別できない方法で実施することが労働安全衛生規則に明記されます。一定人数未満の集団では結果を出さないなど、匿名性を保つルールを委託先と決めてください。集団分析・職場環境改善が努力義務である点は変わりません。

労働基準監督署への実施結果報告は不要

ストレスチェック実施結果の労働基準監督署への報告は、労働者数50人以上の事業場に義務づけられているものです。労働者数50人未満の事業場は、この報告は不要とされています。

小規模事業場で起きやすいつまずき

つまずき 背景 対応の方向
実施者を確保できない 社内に医師・保健師等がいない 外部機関への委託を前提に予算と時期を組む
人事担当者が実施事務を兼ねてしまう 総務担当が人事権も持っている 人事に対して直接の権限を持つ監督的地位にある者は指名できない。役割を分ける
結果から個人が推測されてしまう 母数が小さく、部署も少ない 集団分析の最小人数を決める。個人結果は実施者から本人へ直接通知する運用を徹底
高ストレス者の申出先がない 産業医を選任していない 地域産業保健センターや契約医師など、申出時の依頼先を事前に決めておく
意見を聴く場がない 50人未満は衛生委員会の設置義務がない 労働安全衛生規則第23条の2は、委員会を設けていない事業者に、安全又は衛生に関する事項について関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならないと定めている

2026年から進める準備ステップ

施行は2028年4月ですが、委託先の選定と社内ルールの整備には時間がかかります。次のような段取りで進めると無理がありません。

2026年度|現状を把握する

  • 事業場ごとに「常時使用する労働者」の人数を上記の基準で数える
  • 50人未満の事業場を一覧にし、対象となる事業場を確定する
  • すでに任意で実施している事業場があれば、実施方法と委託先を棚卸しする
  • 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」に目を通す

2027年度前半|体制と規程を決める

  • 外部委託か社内実施かを決める。50人未満では外部委託が現実的なことが多い
  • 委託先の候補を複数比較する(調査票、結果通知の方法、集団分析の最小人数、記録の保存、費用)
  • 実施者・実施事務従事者を決める。人事に対して直接の権限を持つ監督的地位にある者を実施事務従事者にしない
  • 実施規程を作る。厚生労働省がモデル規程の編集ファイルを公開している
  • 労働安全衛生規則第23条の2を踏まえ、関係労働者の意見を聴く機会を設ける

2027年度後半|運用の細部を詰める

  • 個人結果の通知方法、保存場所、保存期間、アクセスできる者を決める
  • 高ストレス者から面接指導の申出があった場合の依頼先と手順を決める
  • 実施事務従事者への守秘義務の説明を行い、記録に残す
  • 従業員向けの説明資料を用意する(受検は義務ではないこと、個人結果は本人の同意なく会社に渡らないこと)

2028年4月以降|実施と定着

  • 1年以内ごとに1回、定期に実施する
  • 申出があった場合の面接指導を遅滞なく実施する
  • 可能であれば集団分析と職場環境改善に取り組む(努力義務)

使える公的支援

費用や人手が課題になりやすい規模だからこそ、公的支援を先に把握しておくと計画が立てやすくなります。

  • 産業保健総合支援センター:47都道府県に設置。メンタルヘルス対策に関する相談対応と訪問支援を無料で提供
  • 地域産業保健センター:全国350か所(おおむね労働基準監督署単位)に設置。労働者数50人未満の小規模事業場を優先し、長時間労働者や高ストレス者に対する医師の面接指導などの産業保健サービスを無料で提供
  • ストレスチェック制度サポートダイヤル:0570-031050(平日10時〜17時)
  • こころの耳:厚生労働省のポータルサイト。情報提供とメンタルヘルス相談
  • 団体経由産業保健活動推進助成金:事業主団体等を通じた産業保健活動への助成
  • 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月):概要版・スタートガイド、モデル規程の編集ファイルもあわせて公開されています

よくある質問

2028年4月より前に始めておく必要はありますか

施行日より前は、これまでどおり努力義務です。ただし、委託先の選定、規程の整備、実施事務従事者の指名には時間がかかります。施行の直前に着手すると、体制が整わないまま実施日を迎えるおそれがあります。試行として先に一度実施しておくと、社内の反応や運用の課題が見えやすくなります。

本社が60人、支店が20人です。支店も対象になりますか

ストレスチェックの実施義務は事業場単位で判断します。本社(60人)は現在すでに義務の対象で、支店(20人)は2028年4月1日から義務の対象になります。事業場ごとに人数と実施体制を確認してください。

従業員に受検を義務づけてよいですか

労働者に受検義務は課されていません。会社が受検を強制する運用は制度の趣旨に合いません。受検率を上げたい場合は、個人結果が本人の同意なく会社へ渡らないことを丁寧に説明するほうが効果的です。

実施結果を労働基準監督署へ報告する必要はありますか

労働者数50人未満の事業場は不要です。実施結果の報告義務は、労働者数50人以上の事業場に課されています。

産業医を選任していませんが、面接指導はどうすればよいですか

地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場を優先して、高ストレス者に対する医師の面接指導を無料で提供しています。あわせて、外部産業医と任意で契約する方法もあります。任意契約が役に立つ場面は従業員50人未満でも外部産業医を活用するメリットで整理しています。

まとめ

2028年4月1日から、労働者数50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務になります。押さえるべきは、事業場単位で対象を判断すること、実施者は外部機関への委託が現実的なこと、人事に対して直接の権限を持つ監督的地位にある者は実施事務従事者に指名できないこと、個人結果は本人の同意なく会社へ渡らないこと、そして集団分析・職場環境改善は引き続き努力義務であることです。

準備は2026年度のうちに、対象事業場の確定と体制方針の決定まで進めておくと余裕が生まれます。50人を超える見込みがある事業場では、産業医の選任義務も同時に発生します。その全体像は従業員50名の壁とは?産業医選任の条件と罰則をご覧ください。

北陸こころとからだ産業支援センターでは、富山県・石川県を中心に、小規模事業場のストレスチェック実施体制づくりや高ストレス者対応のご相談をお受けしています。委託先の選び方や社内規程の整備でお困りの場合は、富山県で産業医をお探しの企業へをご覧いただくか、お問い合わせからご相談ください。

参考にした公的資料

情報確認日:2026年8月20日。制度の詳細は今後の政省令・通達で補われる場合があります。実施にあたっては最新の厚生労働省資料をご確認ください。

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