【2026年版】職場の熱中症対策|新ガイドラインと事業者の7つの確認

職場の熱中症対策は、水分補給の呼びかけだけでは不十分です。2025年6月から、一定の暑熱作業では、熱中症の疑いを報告する体制、重篤化を防ぐ対応手順、その周知が事業者の義務になりました。さらに厚生労働省は2026年3月18日、職場ごとのリスク評価と予防策をまとめた新しいガイドラインを策定しています。
今夏は、法令上の最低限の対応を確認したうえで、WBGT(暑さ指数)の実測、作業計画、休憩、暑熱順化、体調確認、異常時対応までを一つの仕組みにすることが重要です。暑さが一段落した後の体調の整え方は、残暑疲れを長引かせない|睡眠・食事・働き方の整え方で解説しています。
なぜ今、見直しが必要なのか
厚生労働省によると、2025年の職場における熱中症による休業4日以上の死傷者は1,681人、うち死亡者は15人でした。死傷者の約7割は7月と8月に集中しています。建設業や製造業だけでなく、運送業、警備業、商業など幅広い業種で発生しており、「屋外作業の会社だけの問題」ではありません。
気温が下がる夕方以降や帰宅後に悪化した事例も示されています。作業中だけでなく、退勤時の声かけや、帰宅後に悪化する可能性の周知も大切です。
法令で義務づけられている対応
労働安全衛生規則第612条の2では、WBGT28度以上または気温31度以上の場所で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業について、次の対応が求められます。
- 本人に自覚症状がある場合や、周囲が異変に気づいた場合の報告先・連絡方法を定める
- 作業からの離脱、身体冷却、必要に応じた医療機関受診などの手順を作業場ごとに定める
- その体制と手順を関係する作業者へあらかじめ周知する
これは事業者の義務です。一方、新ガイドラインに示されたWBGTの測定方法、休憩、暑熱順化、教育などは、法令上の義務と組み合わせてリスクに応じて選ぶ具体策です。
現場で確認したい7項目
1.責任者と報告先を明確にする
「誰に、どう連絡するか」を、掲示、朝礼、作業手順書などで共有します。スポットワークや応援者にも周知が必要です。
2.作業場所のWBGTを把握する
WBGTは、気温だけでなく湿度や日射・輻射熱も考慮する暑さ指数です。環境省の地域予測は参考になりますが、直射日光下、熱源の近く、風通しの悪い屋内では、JIS規格に適合した機器で現場を実測することが重要です。
3.作業と休憩の基準を決める
WBGT、作業の強さ、防護服などの着衣、暑さへの慣れを踏まえ、作業時間の短縮、休憩、作業変更、中止の基準を事前に決めます。
4.涼しい休憩場所と冷却手段を用意する
作業場所の近くに冷房のある休憩場所や日陰を確保し、水分・塩分を取りやすくします。冷却用品は、緊急時にすぐ使える場所へ置きます。
5.暑熱順化と当日の体調を確認する
暑熱順化とは、体を徐々に暑さへ慣らすことです。新規入職者、長い休み明け、体調不良や睡眠不足がある人は、作業時間や負荷を慎重に調整します。睡眠不足が続いている場合は、勤務側の要因も確認します(長時間労働者への医師面接指導)。
6.一人にしない仕組みを作る
巡視、定時連絡、バディ制などを活用し、互いの状態を確認します。本人が「大丈夫」と言っても、ふらつき、めまい、頭痛、けいれんなどがあれば、決めた手順に沿って対応します。
7.異常時は作業を離し、冷却し、見守る
熱中症が疑われたら、いったん作業から離し、涼しい場所で身体を冷やします。症状に応じて救急要請または医療機関の受診につなげ、搬送や救急隊の到着まで一人にしないことが重要です。
まとめ
実効性のある熱中症対策は、「測る」「減らす」「休む」「気づく」「すぐ動く」を職場の手順にすることです。まず報告体制と対応手順が現場で使える状態かを確認し、WBGTの実測結果や作業内容に合わせて対策を調整してください。産業医や衛生管理者等の意見も活用し、夏の途中でも運用を見直すことが大切です。休暇前後の連絡ルールとあわせて整えると運用しやすくなります(夏季休暇前に整える|心身の不調時の連絡・相談ルール)。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の作業条件における法令適用は所轄の労働基準監督署等へ、体調に関する判断は医療機関等へご相談ください。
参考情報
暑熱環境の見直しや作業手順の点検は、北陸こころとからだ産業支援センターの職場環境の改善支援でもお手伝いしています。富山県・石川県で産業医をお探しの場合は富山県で産業医をお探しの企業へもご覧ください。報告体制や作業手順の整え方でお困りのときは、従業員数・所在地・現在の作業環境をお知らせいただければ、お問い合わせから具体的にご相談いただけます。
参考資料の概要
- 厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(2026年3月18日)
- 厚生労働省「2025年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(2026年3月19日公表ページ掲載)
- 富山労働局「職場における熱中症対策の強化について」(2025年6月1日施行)
- 環境省「熱中症予防情報サイト」(2026年7月27日確認)
